第1回「能海寛・ふるさと100kmトレイル遠足」江本流完走記 其の2
10月23日午前3時過ぎ、起床。1階の食堂で朝食をいただく。
外は、ひんやりしている。長袖シャツの上に半そでTシャツを着ることにする。暑くなったら長袖を脱げばいい、とゼッケン番号は半袖につけた。「1」という恐れ多い数字だが、山の中が多いし、人もあまりいないコースなので、番号など意識せずに行くべし。きょうの体調では、ともかく「完走」が一番の目標だ。
前夜祭をやった「ときわ会館」まで、バスで運ばれた。あたためられた前夜祭会場に入ると、 昨夜のご馳走がよみがえる。
どんなメニューだったか、その後教えてもらった内容を以下に紹介しておきます。食べきれないほどの量があり、皆、満足したと思う。
ぜんまい、わらび、すりごま、豆腐のしらあえ
やまめの塩焼き
トマトの酢漬け
糸うりの酢漬け
白菜、ニンジン、柚子、しょうがのドレッシングあえ
とうがん、卵、糸コンニャクの煮物
よもぎ、しその実、さつまいも、かぼちゃの天ぷら
大根、ニンジン、しめさば、柚子の酢物
花ずし(ごぼう、ニンジン、椎茸、栗、さや豆)
いなりずし(うずら豆入り)
鯖寿司
わさびの葉寿司
豆むすび
黒米むすび
デザート(コーヒー寒天、柿)
さて、最終チェックを受ける。この時、ひとりひとり鈴をもらった。走者は全員この鈴を手首につけるのだ。
おととい、主催者の海宝さんがコースの下見中、7キロほどのところにある「まなびや館」近くでばったり熊と遭遇したらしい。小熊だったが、親も近くにいる可能性がある。
大体、中国山地はクマが普通に棲息しており、ことしは出没情報が異常に多かった。念のため、用心しておくにこしたことはない。
午前5時。海宝さんの挨拶のあと、一斉にスタートする。ビニール袋から腕を出しているランナーもいるが、半袖、ランパンの軽装の人も。いずれあたたまるにしても、しばらくは少し寒すぎるのではないかな。早朝に限っていえば、サンタクロース姿のランナー(こういう人は相当脚力があるのであろう。100キロをサンタ姿で走りきるのだ!)のほうが正解だ。私自身は、長袖、半袖をダブルに着た上、さらに軽いウィンドブレーカーをはおった。
「しまなみ海道」の6月と違って、10月も末となると、朝は遅い。まだ暗いのでライトを照らしながら行く。そうだ。私のようにゆっくりランナーにとって、この時期の100キロは、「ライト必携」なのだ。「しまなみ」のように最後は町を走るコースなら、明かり対策は不要だが、ここでは、すべてのゆっくりランナーは、日暮れてから誰もいない山のコースをひとり走ることになるからだ。
「ときわ会館」は、波佐川のほとりに位置している。私たちはいったん、川に沿って右岸をくだり、橋を渡って左岸を上りはじめた。非常にゆるやかな傾斜で、むしろ平らな、と言いたいほどなのだが、以後当分は「登り気味」の道が続く。
ことしは、紅葉の盛りの時期には少し早いようだ。が、空気の清清しさときたら・・。左手に聞こえるせせらぎ、というよりはもう少し激しい流れだが、を聞きつつ、ゆっくりゆっくり走る。時折、スタッフの車が後ろから道を照らし、抜きさってゆく。
最初のエイドは、7キロ地点の「まなびや館」前。ここにはトイレもある。さすがに長居はせず、スローペースで進む。あたりか次第に白んできて、風景が浮かび上がってくるのが楽しい。
やがて、11・9キロ地点の第2エイドへ。小さな橋を渡ると、登りがきつくなってきた。ずっと舗装されている道だが、巾は狭く、落ち葉が散り敷きつめられている。じくざぐ状態で高度を上げてゆくと、最後はエイド車も登りきれないような傾斜となってきた。何度もエンジンを噴かせて発進するが、止まってしまう。私はもちろん、歩き出す。登りは歩く、と決めている私には、ここまでゆっくりでも走り続けてきたことが、出来すぎなのである。そのせいかこのあたりは、まだ前後にかなり人がいた。
広島県との県境の峠に出る頃には、すっかり明るくなっていた。ここからは、広島県芸北町となる。もらったコース地図を見ればわかるが、「能海寛・ふるさと100kmトレイル遠足」のコースのほぼ8割は、広島県内である。1世紀以上前、青年学僧の能海寛も広島県内を歩いて加計方面に出、そこから舟、汽車を乗り継いで京都、東京に向かったのだ。
峠の標高は、802m。ときわ会館が375mだから、427mも上ったとことになる。箱根駅伝ほどではないが、大した標高差だ。
ここからは下りだ。少し行って15キロ地点の表示があった。そして、八幡平という広広とした畑地に出る。朝もやが、素晴らしかった。
登りで頑張った分、後から来たランナーたちに次々に抜かれる。皆、ゆっくりなのだが、それでもついて行けない。
なんだか身体が重いなあ、とぶつぶつ言いながら、後をのたのたと追う。
聖湖にさしかかるあたりで、早くも足の蹴りが悪いのを感じる。
「江本さん、身体が傾いているよ」とスタッフの三浦もみさんが車からアドバイスしてくれた。やれやれ、やはりラクではなさそうな1日だ。
20キロ地点で7時38分。もう順位は後ろのほうの筈だが、きょうの私の状態にしては、実はここまでは悪くないのである。しかし、いまのこの足の重さ。これから、ほんとの苦労が始まりそう!とのイヤな予感が身体を駆け抜ける。
「こんにちは、能海の本、読みましたよ」
突然、若々しい女性の声が聞こえた。(この項続く)
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EMOTO Yoshinobu 江本嘉伸
著者:江本 嘉伸(えもと よしのぶ)さんのご紹介